赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (Bibliotheca Nocturna)



赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (Bibliotheca Nocturna)
赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (Bibliotheca Nocturna)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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清潔さを志向する社会にあって、実際に生きた証を感じさせる好書

昭和33年の売春防止法の施行以来、基本的には「存在してはいけない」赤線・青線地帯。でも、一点の曇りも容赦しない法律が定める世界と生々しい我々が暮らす実際の社会とでは、かなりの「ズレ」があることは大人だったら誰でも知っています。

本書はそんな「赤線(青線)地帯」を写真と文章でルポしたものです。「鳩の街・玉乃井」などすでに“死滅”した地域から、川崎・南町など“微妙な場所”まで地域別に追っていますが、屋根や窓の形や周辺の道路の形状など「赤線地帯特有の決まりごと」が、いまなお現存しながら、それでも都市の再開発という波に対して人知れず抵抗を試みている様子が写真を通してわかります。そこには確かに春をひさぐ女性が現存した事実があり、たとえ場所としては死滅しても、男女のさまざまな思いが確かに凝縮されているのです。

「汚いもの」「不快なもの」を排除していく世の中にあって、確かに「赤線」は時代遅れ、アナクロニズムの極致でしょう。実際、全国各地にいまで現存する「旧赤線地帯」も、実際に「汚い場所」から「快適で清潔な場所」へと変えられています。確かに防犯上や衛生面を考慮すれば、致しかたないことだと思います。果たしてその場所に渦巻く人の思いや情念までをも消し去ってしまっていいのだろうか、と考えないわけでもありません。街として一点の曇りのない状況、たとえば機能的な郊外のニュータウンのような街が果たしてベストと言えるのか、逆に無駄な場所や怪しい場所が存在してもそれもあわせ呑む「鷹揚さ」が街としての「余裕のようなもの」を生み出すのではないか。おそらく筆者がいちばん表現したかったことは、この点だと思います。

街の宝探し

遊郭、赤線、当時の建物に興味のある方にとってはバイブル的な存在になりつつある本です。吉原のようにソープランド街として、当時さながらの雰囲気をかもし出している街もある一方、鳩の街や玉乃井のように、過去を捨て去ったかのように、静かな住宅街となっている赤線跡もあります。
当時を知らない我々に、遊郭・赤線跡の建物を通じで、その時代の匂いを伝えてくれる写真集です。木村氏の著書からいつも思わせられるのは、建物や風俗嬢を含む風俗業全般に対する、氏の暖かな視線です。面白おかしく採りあえげるのでもなく、必要以上に悲壮感を感じさせるのでもなく、淡々とした語り口で語ってくれるのが魅力的な本です。もう少し写真が多ければ満点です。
お散歩ガイドにいかがですか?

公娼制度の廃止に伴い、戦後間もない頃から形成された赤線地帯。
時代の流れとともに現在は旅館やアパートなどに用途を変えて生き残ってきたそれらの建物も、危機的な状況を迎えています。そのわずかに残った街並みを写真と文で記録する味わい深い本です。

前ページに写真が載っています。しかもその半分くらいはカラーです。現代の建築物にはなかなか見られないステンドグラスやタイル使いの建物をはじめ、建築関する貴重な資料ともいえる素敵な本。主に東京都内、関東近辺の建物が中心なので、関東に住んでいる方はこれをガイドブック代わりにして、古き時代を訪ねるお散歩なんかをしてみてはどうでしょうか?
「赤線跡を歩く」を歩く

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